望んだ事はB

□沈黙の連鎖
2ページ/5ページ

「・・・あの夜、かなりの被害は被りましたが、勝利を得たのは忍術学園でした」

振り返るのは、二日前の出来事。

学園に残っていた生徒達の方が傷や疲れは酷く、みんなの緊張の糸はプツリと切れていた。

本来ならば、るるるが大木雅之助に感じた闘いの余韻のように、完全な終戦を迎えるまで油断してはいけない。
それがプロ忍と忍たまの明らかなる差。

「その場には、そんな僕たちしかいなかった」

だから、まだ忍んでいた敵に気付くのが遅れた。

そして、最後に残っていた学園の危機をいち早く察知したのは、闘いとは無縁のるるるだった。
大きく手を広げたその格好は、学園長を守るべく、いや学園を守るべく、凛とした強さの現れ。

伊作や上級生が全てを理解し、行動に移すまでには、時間は少なすぎた。

朝焼けの空に響いた銃声。
同時に鳥の群れがバサハサと飛び立ったた音が凄まじかったが、その後は銃声が鳴る前よりも辺りは静かになった。

誰一人と、声が出せなくなったからだ。

目の前の受け入れ難い現実。
ただ、その行く末は何も言われなくても分かる。
一年生すら、理解出来てしまうくらいに残酷だった。

銃口からのぼる白い煙。
地面に染み出る真っ赤な液体。
倒れているのは、るるる。

しかし、

「利吉さん!!」

悲痛なまでの叫びは、るるる自身の物だった。

彼女に覆い被さるように倒れこんでいる利吉。
地面にはおびただしい血が、止まる事なく流れ出していた。
その量と速さに、るるるは恐怖している。

誰もが恐らく・・・と感じ始める中、伊作は確信した。

『もう無理だ』

保健委員長の経験と直感が、誰よりも早く未来を見据えた。

それでも、動かない訳がない。
素早く駆け寄り、そっとるるるから利吉を離し、地面に寝かせる。

もう出来ることはない。
出来ることとしたら・・・。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ