望んだ事はB
□いない
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「学園長先生。私はるるるちゃんに荷物を届けてきますね」
伊作が招かれた一室に踏み入れる前に、そう告げた。
「そうか、頼む」
学園長の言葉を受けとると、軽く会釈をして来た廊下を戻っていった。
背中を見守った後で和尚が、
「どうにかなってしまいそうな顔をしておるな」
誰に言うでもなく呟く。
それに反応するかのように学園長が、
「伊作だけじゃなく、学園全体がそんな感じじゃよ」
深いため息をついた。
「わしも長年生きておるが、こんな悲しみは味わった事はない。
それを子供達が背負っていると思うと、それだけでまた苦しくなる」
「そうか、そんなにか」
和尚は遠くを見ているような言葉で返した。
「最近、お主からは随分と楽し気な手紙が届いていたからのう。
わしも彼女らに会うのを楽しみにしておったんじゃがな・・・」
『彼女ら』
誰を指しているのか、わざわざ名を告げることはしない。
言わずとも分かるという想いと、もう一つ。
口にするには辛すぎる現実。
学園長は目を閉じたまま、眉間に皺を寄せた。