望んだ事はB

□終結と集結
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「土井先生!もう歩けますって」

「・・・嘘を付くな」

半助に抱えられている七瀬。
実は目を覚ましたのは、数分前だ。

自分の置かれている状況を暫く理解出来なかったようだが、ふと我に返り同じ問答を繰り返している。

「じゃあ、置いてって下さい」

「嫌だ!」

「嫌だって・・・子供みたいな」

そして、聞こえてきた爆音。
しかし、二人は気づいた。
さっきまでの音とは違うことを。

「木のざわめきがなくなりました。
みんなが間に合った!
先生!急いで下さい!」

「・・・あのな」

思わず呆れる半助。
抱いている七瀬の前を見つめる横顔に目をやる。
まっすぐな瞳。
傷だらけの頬。

「すまない」

守ってあげられなくて。
休ませてあげられなくて。

「何言ってんですか!
ちゃんと守ってくれたじゃないですか。
ドクタケ城から出れたのは、土井先生のお陰ですよ」

実際、その通りなのだ。
七瀬が倒れて、魔界之小路先生に支えられた瞬間、

「そのまま、捕らえろ!」

八方斎が叫んだ。

「え?え?」

しかし、もう魔界之小路先生の腕の中には彼女はいなかった。
半助が奪い去っていた。
魔界之小路先生が本気で捕らえる気がなかったともいえるが、それにも増して半助の放つ殺気は凄まじかった。

「それにさっきから、休ませてもらってますよ?」

そう、ずっと抱かれている。
離してくれないのは誰だとも言いたい。

「お陰で、夢まで見ちゃいました」

「夢?」

こんな時に見る夢は一つ。
白い空間の夢のような現実。

「周平が元の世界に戻れたそうです」

「そうか」

正直なところ何が起こったのか、何を起こしたのか半助は分かっていない。
いや、あの場にいた人間で全てを理解できた者など皆無だろう。
ただ、彼女の言葉だからは半助は頷いたにすぎない。

「行こう」

終結と集結まで、あと少し。
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