望んだ事はB

□癒された傷
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「七瀬・・・」

周平が顔を七瀬に向けた。

『幼い』

そう感じた。
容姿は補整通り、二十半ばに見えなくもない。
しかし、今見えるのは本当の周平の姿のような気がした。
例え十代だったとしても、忍たまを思うと彼は幼すぎだ。

『生きる時代が違うということか』

別に誰が悪いとか、誰がすごいとか、そういうことではない。

ただ、

「ここは周平がいるべきとこじゃない」

そして、

「お前を待ってる人がいるだろ?」

確信に触れた。

るるるが感じ取った、聞こえぬ声の正体。
七瀬は知らない、二人の出来事。
しかし、今の周平は混乱していた。

「さっき言ったじやないか!
俺はあの声には答えられないって!」

「声・・・」

七瀬が繰り返す。

「声・・・そっか。よかった」

周平の頭を撫でる。
手に流れた血は、雨で洗い流されていた。

「誰の声?」

「・・・母さん」

「そう・・・羨ましいな」

優しく、悲しい笑顔。

「七瀬、俺・・・」

「大丈夫。生きててほしいから、呼ぶんだよ」

「あ・・・」

周平は思い出した。
るるるに言われたあの言葉。

『呼ばれるのは、必要としているから』

どちらも同じ意味だ。

「俺は・・・戻っていいのか?」

「当たり前だよ。
ちゃんと生きてるんだから」
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