望んだ事はB

□学園からの報せ
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驚いたのはそこに、

「市原周平」

彼がいたからだ。
思わず名前を口にすると、彼の口許が上がった。

「久しぶりっ!・・・でもないか」

なんか、むかつく。
七瀬は、きっと睨んだ。

「そんなに怒んないでよ、僕は好きなのにさ」

「何を言っておる!」

八方斎が隣で赤くなっている。
意外にも初だ。
しかし、そんなでかいタコ、二人にはアウトオブ眼中。

漂う緊張感。
七瀬は構えてはいない。
本当に彼とは闘う気はないのか。

「周平・・・」

七瀬がもう一度名を呼ぶ。
そして、視線を合わせる。
その深さ、力強さに
一瞬動揺の色を見せたのは、まだ十代のはずの市原周平。

七瀬が小さく息を吸い、決心をした。

「早く帰りなさい」

闇を貫く七瀬の台詞。
闘わず、説得を試みるようだ。

「な、何だ?」

八方斎がまたも固まる。
いや、その場にいた半助も小平太も、そして長次も。

「煩い!お前に何が分かる!」

叫んだのは、周平。
彼にだけはいづれにせよ、七瀬の言葉の意味が伝わったらしい。

「お前に、俺の気持ちが分かるのか!」

感じたのは、殺気にも似た怒り。
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