望んだ事はB

□潜入
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「利吉、ご機嫌じゃないか」

合流した父親に、いきなり見透かされる息子。

「仲直り出来たのか?」

ニヤニヤ顔で、一緒に走る。

「余計なお世話です!」

「照れおって」

「父上・・・」

こんなやりとりをしてはいるが、

「よし、みんないるな」

生徒を確認すると、伝蔵は真剣な顔になった。

「先に利吉が行って、その後で私と文次郎、仙蔵が行く。
留三郎と伊作は、二班に備えろ」

二班とはこの場合、先鋒の失敗を補う役を言う。

ドクタケ忍者に扮した利吉が、地下への入り口に立つ同じくドクタケ忍者に近付く。

「うう、今日は冷えるな。
夜中の見張り番なんて、ついてない」

「全くだよ。もう交代の時間か。
やっと寝れる」

「ああ、お疲れさん」

自然に見張り番の交代が完了した。

「よし、行くぞ」

利吉の合図で、三人が地下へと消えていく。

「みんな、怪我しないでね!」

「もう、聞こえちゃいねえよ」

留三郎の鋭いツッコミに無言になる伊作。
しかし、本当は別の事を考えていた。

「みんな、怪我しないでね」

さっき自分が言った言葉と同じことを、ここに来る前に言った七瀬。
作戦会議で市原周平の相手を自ら志願し、今まさにそれに対峙しようとしている。
本当なら、真っ先にるるるときり丸を助けたいはずなのに。

そして、彼女はもう一つ言った。

「市原周平も傷つけないで」

彼女らしい。
それ故に、心配だけが募る。
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