望んだ事はB

□ハートキャッチ
2ページ/4ページ

案内された部屋で待っていると、襖がスッと開き、市原周平が入ってきた。
何も言わず目も合わさず、るるるの目の前にストンと腰を降ろす。

「「・・・」」

しばしの沈黙。
やはり気まずい。
なんだか、始まったばかりのお見合いのようだ。

「まあまあ、後は若い人同士で」

「は?・・・なに言ってんの」

「やべっ、口にしちゃった」

会話は成り立っていないが、沈黙は回避出来たようだ。

「ねえ、市原先生?」

「何で、あんたが呼ぶんだ」

「山ぶ鬼のサブリミナル効果」

「さっきから、よく分かんない」

確かに。
そろそろからかうのをやめないと、怒らせては意味はない。

「あ、あのさ。ありがと」

今度は唐突にお礼。
周平の目の奥が光ったのが分かった。

「いや、ご飯とか」

慌てて付け加えると、

「ああ、別に」

理解した途端、普通に戻ってくれた。
危ない危ない。
ってか、怖っ。

「あんたさ、怒ってないのか?」

今度は周平の方から、話し出した。

『チャンス』

こういう相手は質問攻めには出来ない。
しかし、向こうから切り出してきたのなら別だ。
るるるの心理戦は成功したようだ。

「それほどはね」

そして、答える。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ