望んだ事はB
□一線
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「カイト!」
名をもう一度呼んだが、もう姿はそこにはなかった。
というより、目を覚ましてしまったのは自分だ。
「肝心な事が分からなかった」
市原周平の目的。
そして、元の世界に戻す方法。
寝たままの体勢。
見慣れたくの一長屋の天井。
辺りは明るい。
朝だ。
意外にしっかり睡眠がとれてしまった。
こんな時にとは思うのだが、気分が別の意味で落ち着いていた。
今度は、分かっている。
『土井先生のお陰だ』
強く抱き締めながら、帰るなと言ってくれた。
今はどうしたらいいのかは考えられない。
ただ、嬉しい。
それだけだ。
そんなことだけで、眠れなくなったりよく眠れたり、不思議に思う。
「あ!」
ふと思い出したのは、もう一つ。
頬への口づけ。
急に顔に熱が集まってきたのが分かった。
「るるる、助けるから助けて!」
一人、変な朝を迎えた七瀬だった。