望んだ事はB

□一線
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「・・・言ってる事がよく分からない」

正直な感想だ。
実体ではないと言うなら、彼に触れた事はどうとればいいのか。
実際、傷もつけたし、治したりもしている。

「彼の存在は、そうこの世界の人間に近いかも」

カイトが七瀬の疑問を溶かし始めた。

「彼の実体は元の世界で寝ている。
昏睡状態で動けないんだ」

「昏睡・・・何故?」

全く予想もしてなかった。
思わず口に出たが、更に返ってきたのは、もっと予想外だった。

「俗にいう、自殺未遂だよ」

心臓が跳ねたのが分かった。
それからは、激しく鼓動する。
怖い。

「だから、彼の精神だけがこっちの 世界にいる」

カイトは七瀬の蒼白した顔を悲しげに見て、優しく肩を抱いた。
彼女も過去そうしたいと思った事がある。
それを知っているからだろう。

「体は水神が作り出した仮の姿。
動きが速いのはそのせいだよ」

仮の姿。
架空の存在。
それが、カイトの言いたい「この世界の人間に近いかも」に繋がる。

触れることは出来る。
ここが彼らの現実だから。
ただ、七瀬達とは一線違う。
考えたことのなかった事実。

「違うの・・・か」

何か悲しくなった。
彼らの存在ではない。
自分の存在が・・・。
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