望んだ事はB

□大波
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「すまんの、お前さんも疲れているじゃろうに」

「いえ、全然」

七瀬の声は淡々としている。
まるで、怒りを押し殺しているようだ。

「今からでも助けに行けますよ。
っていうか、もう行ってもいいですか?」

「ダメじゃ、馬鹿者!」

大きな声が響いたが、七瀬も負けてはいなかった。

「馬鹿で結構です!馬鹿だから、こんな結果を招いたんですし!
全部私のせいなんですから!」

ヘムヘムが学園長の後ろに隠れた。
いつもの彼女とは違う。

「関係ないきり丸まで巻き込んじゃうし、しんべえだって怖がってるし、乱太郎だって!」

畳を思いっきり叩く。
怒りをどこに向けていいのか分からないのだ。

「もっと早く・・・もっと」

「もっと?何かじゃ?」

学園長が問うと、七瀬が真っ直ぐに視線を合わせた。

「もっと早く帰るべきでした、自分達の世界に」

「七瀬!」

そして、立ち上がり、

「絶対に助け出します。そしたら、帰ります!」

言い切った。
更に、

「あいつも。
もし、方法がなかったら・・・」

市原周平は望んでここに来たらしい。
もうそれで望みが果たされているなら、

「殺すか?」

学園長が代弁をした。
自分で言うつもりが、いざ口にしようとすると出来なかった。

「・・・やりますよ。
ここにいちゃいけない存在なんですから、あいつも」

頭を下げると、走って出ていってしまった。
開けっ放しの襖。

「あいつ・・・も、か」

それでは、自分に言っているのが丸わかりではないか。
と、ため息を吐く学園長。

「本当に世話のかかる娘達じゃ、ヘムヘム」

「ヘム〜!」
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