望んだ事はB

□大波
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泳ぎは得意ではない七瀬。
神の力なのだろう、身体を動かさずに乱太郎を抱えたまま水面に出た。

気を失いかけたのを必死にこらえ、砂浜目掛けて移動する。
足がつく深さになってようやく自力で歩いた。

「ハアハア・・・」

息が上がっている。
もし今攻撃されたら勝てない。
が、構えないわけにはいかない。

「・・・」

しかし、気配がない。
もう姿も見えない。

「ら、乱太郎!大丈夫?」

むせた事によって、乱太郎が目を覚ました。
大きく震えている。
強く抱き締めると、その震動が伝わってきた。

「大丈夫、大丈夫!
ゆっくり息して。
みんなのとこに行こう」

そのまま抱き上げて、海に浮かぶ味方の船を見た。

「!!」

七瀬の肩が大きく揺れた。
流石の乱太郎も顔をあげる。

「な、何?七瀬、どうしたの?・・・・あ!!」

同じように肩を揺らして驚く乱太郎。
しばらくして、自分から七瀬の腕をほどき、地に立った。

そして、フラフラと歩き出す。

「乱太郎!」

出てきたばかりの水の中に、再び入っていこうとする乱太郎の腕をつかんで止めた。

「は、離して!」

制止を振りほどこうとする乱太郎。
七瀬の声が耳に入っていないようだった。

頬をつたう涙。
よく見ると、眼鏡の右側のレンズがなかった。

波打ち際にしゃがみこむ乱太郎。
そして、叫んだ。

「みんなーーーーっ!」

声の向こうには、船首を空に向けて沈みかけている船が見える。
るるる達が中にいるはずの兵庫水軍の船だ。
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