望んだ事はB

□水軍
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「なんで、早すぎる!」

乱太郎も驚いたのはそこだ。
抱える体の震えが伝わってきた。

「大丈夫」

乱太郎を下ろすと、抱き締めて落ち着かせ、

「いいか、船の近くまで走れ。
義丸さんが小舟を出した」

目をみて言った。

「七瀬は?」

「私は大丈夫、後で行くから」

「嫌だ!」

今度は乱太郎が抱きつき、力を込めた。

「あの時みたいに、もう一人では行かない!
七瀬は私が守る!」

「乱太郎」

あの時。
それは、園田村の攻防。
伊作と乱太郎の三人で、連絡班として先に出た。
伊作に加勢する為に残り、乱太郎を先に行かせたあの出来事。

「市原先生!何かご用ですか!」

七瀬を守るように立った乱太郎。
懐から出したのは、唯一持っていた手裏剣一枚。

「・・・久しぶりにだね、乱太郎。
まだ、先生って呼んでくれるんだ」

砂浜を一歩一歩近付いてくる。
息を呑む、乱太郎と七瀬。

「ドクタケの間者だったんですか!」

乱太郎の口数は増えるばかりだ。
分からない恐怖を肌で感じているに違いない。
流石、一年は組。
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