望んだ事はB
□水軍
3ページ/5ページ
「七瀬、何で逃げるの?」
抱えられた乱太郎が舌を噛みそうになりながら言ったが、七瀬は答えなかった。
ただ、
『逃げろ!』
体がそう反応する。
更に勢いを増す。
「見えた!兵庫水軍の船!」
必死で走ったかいがあって、一先ず逃げ切れたようだ。
こちらに気付いた義丸が手を振った。
しかし何か叫んでいる。
視線は自分達のもっと後ろを見ている気がする。
嫌な予感。
「七瀬!」
乱太郎が叫んだ。
同時にジャンプしてかわしたのは、
「な、何これ・・・」
突如、襲いかかってきた大波だ。
今日は穏やかな海。
しかも、海岸の浅瀬。
こんな波が発生するのはありえない。
退いていく波を見れば、さっきまでなかった姿が現れた。
「市原周平」
船にいたはずの人間。
ついに七瀬の口から、名前が発せられた。