望んだ事はB

□二人
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「すごい・・・綺麗」

恐る恐る目を開けると、大サービスのテッペンだった。
しかし、彼女は高所恐怖症ではない。

前々から気になっていた木。
学園の中で一番高い。
そこから見えるのは、地平線。
言葉は知っているが、見たのは初めてだった。

「この世の物とは思えないね」

「ふふふ。
不思議な言葉だね」

前なら、不自然と言っていたかもしれない。
ただ、今は不思議としか言い表せない。

「こんな綺麗な景色があるって知らなかったね」

七瀬がもうすぐ沈む夕日を見送りながら言った。

「うん、テレビより本物は綺麗」

るるるが笑った。

「ここは何もかもが綺麗だね」

「うん」

山も川も空も。
朝日も月も。
そして、人も。

「ここが大好き」

「うん」

「だから・・・」

るるるは何故か驚きはしなかった。
多分、七瀬が次に何を言うのか、分かっていたから。
それは、自分が先に言っていたかもしれない。

この木に登りたい。
そう言ったのは、それを伝える為だったかもしれない。

「「元の世界に、一緒に帰ろう」」
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