望んだ事はB

□策士るるる
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「策は上手く行ったのか?」

山田先生がるるるの横につけ、小声で言った。

「すみません。よくわからなくなりまして」

「は?・・・どういうことだ?」

るるるの策として掲げられたのは、猪名寺家に行くこと。
正直、伝蔵もそこで何をするのかわからなかった。

それなのに提案した本人が、

「余りの平凡さに、何をしようとしてたのか分からなくなっちゃいまして。
ま、リフレッシュにはなったと思いますが・・・」

「はあ〜」

呆れる伝蔵。
苦笑いのるるる。

「いいえ、るるるの策は見事でしたよ」

「七瀬・・・」

二人の間に割り込んできた。
どうやら聞こえていたようだ。

「猪名寺家は本当に普通のお宅でした」

凄まじい忍者の夫婦喧嘩は、特殊ではあったが今は伏せておこう。

「そして、その普通が大切だと言うことがよく分かりました」

言いたいこと言って、怒って笑って。
でも、相手の事が大好きで。
幸せになりたいとか、幸せにしたいとか思ってなくて、ただただ同じ日々を繰り返している。
それこそが、何事にも変えることの出来ない幸せ。

「普通って、素敵ですね」

刺激や変化を望んで生きるより、ふと見せた平凡な幸せを感じられる人間になりたい。

「私はもう少し、自分を出そうと思います」

偽っているうちは、平凡な日常なんて得られない。
まずは、自分がそうでなければいけないと分かった。

「自分に自信がないのも、他人を信じられないのも、まずそこから始めないと駄目だと分かりました」

自分が何を求めているのか分からなかった。
求める事さえ怖かった。
相手の言葉を信用出来なかった。
想いを受け取るのが怖かった。

全部受け身のようで、全然受け止めようとしていなかった。

「私の本当を見てくれる人となら、いつか猪名寺家みたいな家族になれるのかなって」

照れ笑いで締め括ると、乱太郎ときり丸に向かって走り出した。

「なんか上手くいったみたいだな、策士殿」

山田先生が感心する。
最終的に忘れるという失態こそあったが、それを抜かせば見事な成功。
この読み、末恐ろしい。

「日常にこそ解決の糸口かある!の術にございます」

Vサインをして、るるるも後を追う。
その二つの背中を見つめる二人。

「あんな顔するようになったんじゃ、益々ライバルは増えるな半助」

伝蔵がからかうと、

「私は人の本質を見守る仕事をしているプロですから、負ける気はしませんね!」

珍しく強気で答えた。
それには理由がある。
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