望んだ事はB

□真の主役
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「気持ちいい〜!」

お弁当を食べ終わり、横になっている乱太郎。
一番幸せな一時だ。

「いいよ、寝ても」

向こうでるるると母ちゃんは、爆睡中だし。

七瀬もゴロリと倒れ、伸びをした。
山のてっぺんで見上げる青い空。
空が近い気がする。

「ねえ、乱太郎」

「なあに?」

乱太郎が七瀬を見ると、ボーッと空を見たままだった。

「私ね」

「うん」

「嘘をついてることがあるんだ」

「・・・嘘?」

突然予期せぬフリに、思考が整わない十歳。
でも、頑張る。

「私だって、たまにつくけど?」

本当にいい子だ。

七瀬が乱太郎の方に、ゴロゴロと移動してきた。

「私は本当は十七歳じゃないって、言ったらどうする?」

「ええーーー?!
じゃあ、いくつなの?十五?十三?」

何故、若くなる!
苦笑いの七瀬。

「違うよ、もっともっと上!
ところでお母さんって、幾つなの?」

「え、母ちゃん?
う〜んと、三十・・・六かな?」

「はは・・・」

聞くんじゃなかった。

「ごめん・・・」

それしか言えなくなる。

すると、手が伸び七瀬の頬に触れた。
乱太郎が両手で、

「いたっ!」

引っ張った。そして、

「鉢屋先輩みたいな、変装ではないんですね」

驚いている。
すると、今度は優しく笑った。
コロコロと変わる表情にドキリとした七瀬。
流石は伊達に主役をはってはいない。

「山本シナ先生や学園長のガールフレンドのお二人も、実のところ本当の歳は誰も知らないんだよね」

クスクスと笑う。
子供らしい笑い方だ。
と、思ったら急に真顔になった。
な、何だ、どうした?

「私は何歳でも、七瀬が大好きだよ!」

顔を真っ赤にして、言い切った。

「・・・ありがとう、乱太郎」

トクン。
何かが、七瀬の心に届いた。
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