望んだ事はB

□三禁
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絹を裂くような女性の悲鳴。
一番先に駆けつけたのは、文次郎だった。
あの真夜中の物音以来、少しだけ神経を尖らせていたお蔭だ。

「何をしている!」

カキーン!
相手が答える暇もなく、苦無を交えた。

一年は組の教室で、るるるが悲鳴を上げ、泣いている七瀬を抱きしめている。
そして、二人の前には苦無を向けた市原周平。
まはや、言い逃れは出来まい。

「ついに正体を見せたか!」

流石はギン次郎。
互角に張り合う。

「な、何があった?!」

次々と集結する仲間達。
みんな反応は同じだ。

「ちっ!」

「待て!逃がさん!」

窓から周平が飛び降りた。
それを追う文次郎。
小平太と長次、留三郎も続く。

教室からはもう見えないが、下にいた五年生らしき声も聞こえる。
一時、放課後の忍術学園が騒然とした。

「るるる、何があった」

「七瀬ちゃん!」

仙蔵と伊作が教室に残っていた。
駆け寄る二人。
るるるは安堵を見せたが、七瀬は顔を上げなかった。

「いさっくん、お願いがあるんだけど」

「何?」

「七瀬に盛って」

「へ?」

るるるの遠まわしのような、ストレートのような言葉に目を丸くした伊作。

「伊作・・・」

しかし、仙蔵が彼の肩に手を置き、こくりと頷いた事で、この状況を把握した。

懐から小瓶を出し、手拭に液体をかける。
るるるから、虚ろな七瀬を受け取ると、そっと口にそれを当てた。

「先輩!奴は学園の外へ逃げたようです・・・」

三郎が教室に入ってきた。
学園長も一緒だ。

「七瀬!」

伊作の腕の中で、倒れている七瀬を見つけ、三郎が慌てた。

「大丈夫、外傷はないよ。
いさっくんが盛っただけ」

「・・・るるる。別の言い回しにしてくれ」

仙蔵がため息をついた。
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