望んだ事はB

□悪いのは誰だ
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二人の気持ちが痛いほど分かる人間が、半助の横で寝ている。
正確には、寝たふりをしている。

父であり、先輩である山田伝蔵。

初めて見た息子の男としての顔。
それだけに責めることが出来なかった。

こうなる前に止めるべきだった。
分かっていたくせに。
利吉の気持ちを。

『利吉、半助。自分を責めるな。
この気持ちは、誰も悪くはない』

応援してやりたいが、別の心配もある。

自分から見ればまだ若いが、一応成人している彼らがこんな風になってしまう。
生徒にだって七瀬に想いを寄せる奴等がいることを知っている。
まだ未熟な彼らの事を思うと、どんな事が待っているのか想像がつかない。

忍の三禁。

一番不味い事が、起きようとしているのかもしれない。

目を閉じている伝蔵。
本人は気づいていないが、眉間にすごい皺が出来ている。

それを無表情で見ていた市原周平。
そして、口許が一瞬だけ上がった。
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