望んだ事はB

□望んだ事は
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「出でよっ!シェンロ・・」

「その呼び出し、いいから」

お決まりのドラゴンボールネタを止めたのは、

「カイト!」

銀色の風神だ。
赤い世界に舞い降りた、不思議なコントラスト。

「七瀬・・・」

初めて会った時に見た笑顔とは、明らかに異なる。
しかし、それもまた綺麗だと七瀬は思った。

二人の前に現実として現れたのは二回目だ。
なのに、懐かしささえ感じる。

「「カイト?」」

ふわりと何かが二人を包んだ。
余りにも心地よい感触と、うっとりする香り。
カイトに抱き締められたと分かるまでに、少しだけ時間を要した。

「二人ともありがとう」

そして、聞こえたきたのは、感謝の言葉。
耳元でふわりと風が揺れる気分。
最近のカイトなら、「ゴメン」だとるるるは思っていた。
もしかしたら、「頑張ったね」とかもありかもと七瀬。

しかし、予想外の「ありがとう」。
思わず、

「「な、何で??」」

ハモる。

「相変わらず面白いけど・・・今のはイラって来るな」

神が笑う。
つられて、二人も笑う。
それを見つめるみんなは、ちょっとだけ目が点。
でも、今は三人の世界。

「修行が終わったからね」

カイトが続けた。

「そうか、これで終わりだから?」

るるるが納得すると、

「違うよ」

即、返された。

「それは手段に過ぎなかった。
知るためのね」

知るため?
二人はそんな顔をした。

そう言えば、叶える叶えないは別として、人間が何を望むのかを知りたいと、初めて会ったカイトは言った。

人間の願い事。
それが分かったから?

「それも、違う」

言葉にしていない二人の思考が、またも返される。

「理解出来ない感情があったんだ。
それを知ることが出来た」

それを知るために、修行としてやらされていたとも言った。

カイトが、神が理解出来ないでいた物。
それは、

「愛しさ」

誰かを好きだと言う気持ち。
誰かを幸せにしたいと言う心。

本当に理解するのは難しい。
他人が思うことを見て、感じるだけでは物足りなかった。
そう、自分で思ってこそ、初めてそれは心に宿る。

「二人のおかげで、それが分かったんだ」

だから、ありがとう。
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