望んだ事はB

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「・・・疲れた」

大きなため息と共に、敷かれていた布団にダイブした七瀬。

久々の自分の部屋、そして布団。
気持ち良くないわけがない。

ここに帰ってくるまでに、当たり前だが揉みくちゃにされた。
何人、いや何十人に抱き付かれたことだろう。
もちろん、みんな泣きながら。

胸に感じる温かさ。
生きている実感。

初めて忍術学園に来た頃、同じように一人で寝ていた時をふと思い出す。

『死にたい』

不用意に口にして、伊作を悩ませた一言。

あれから数ヵ月。
まだそれしか経っていない。
だけど、いろんな事があった。
ありすぎた。

お陰で、自分は変われた。

どんなふうに?と聞かれても、困ってしまう。
目に見えての変化は、正直分からない。
唯一言えること。

『もう、あの時の自分はいない』

生きている事に喜びを感じたのは、初めてかもしれない。
目を閉じようとした瞬間、

「七瀬さ〜ん?」

襖の外から、声がした。
ここはくの一長屋だから、その声は女の子の物だ。

「トモミちゃん?どうぞ」

その返事の数秒後、すっと襖が開くと、名を呼んだくのたまが立っていた。

「あの、金楽寺の遣いの方がるるるさんの荷物を届けてくれました」

足元に大きな篭。
よく見れば、いつも二人で使っていたやつだ。
この部屋に無かったことに今気付く。

「ありがとう」

るるるほど付き合いがないくのたま。
これ以上会話が続かなかったが、

「あ、あの・・っ」

「?」

「わ、私、七瀬さんが戻ってきてくれて・・・嬉しいですっ!」

顔を真っ赤にしながらそう言うと、荷物を廊下に放置したまま走っていった。

ひとまず思う。

『よかった。嫌われてなくて』

意外と小心者な七瀬。
これからもっと仲良くなろうと、小さく誓う。
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