望んだ事はB

□終結と集結
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「仙蔵、ごめん」

「舌噛むぞ」

るるるを抱きながら、学園を目指し夜の森を駆け抜けて行く仙蔵。
山田先生を先頭に、他のメンバーは全速力で引き返して行った。

るるるをあの場所に置いていくわけにはいかない。
かと言って、闘いの最中の学園に帰るのも危ない。
少し遅れて着くように、仙蔵がるるるを担当したのだ。

『七瀬』

反対に置いてきてしまった少女の名前。
しかし、口にすることは出来ない。
恐らく自分以上に心配しているるるるの前では。

「!」

向かっている方向に言われぬ危険信号のような、何かを感じた。

ドカーーーン!!!

「きゃあ!」

地面が揺れる。
決して倒れるつもりはないが、その轟音にるるるが叫び、仙蔵につかまっていた手に力を入れた。

「学園の方から、だよね?」

「・・・ああ」

「ミッキーのゆり子?さち子?」

仙蔵は答えない。
ただ、そうだといいとは思った。
あの音は、忍術学園の生徒の攻めている物であってほしい。
攻められているのではない、攻めている音。

「立花仙蔵、行こう!」

るるるが言った。
自分を置いていける事が出来ないのなら、せめて早く連れていってくれて構わない。
その想いを伝えるには、それだけで充分だった。

「ああ、わかった」

『立花仙蔵』

るるるは心でもう一度、その名を呼んだ。

そういえば、昔はフルネームでみんなを呼んでいた事があった。
もちろん元の世界で。

名前を覚えるのに必死だったあの頃。
ずっと、ずっと前の記憶。
もう、いつから彼らが好きだったのか分からない。

『それくらい前からの、君たちと私との不思議な縁』
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