望んだ事はB

□癒された傷
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「早く捕まえろ!」

隣の八方斎が痺れを切らした。
無言で動かなくなっている周平をよそに、

「ちょっとでも抵抗してみろ、あいつがどうなっても・・・」

指で指したのは、闇の彼方。
しかし、その台詞が終わらないうちに、

「残念だな」

姿を見せた仙蔵に遮られることとなる。
闇から出たのは、五つの影。
仙蔵、文次郎、利吉、伝蔵。
そして、大木雅之助。
いや、六つだ。
彼の腕の中に嬉しそうな、

「るるる!」

七瀬が叫ぶ。

「くそう!いつの間に!!」

怒りで顔のでかさが倍増したようにも見える。
って、そんなわけないか。

「るるる!大丈夫?」

「大丈夫!大丈夫!」

大木雅之助が降ろすと、二人は手をとった。
安堵する七瀬。

「きり丸は?!」

「安心して!もう忍術学園に向かってるって。
いさっくんとケマトメが一緒だよ」

それを聞いて、心臓が激しく動揺したのは七瀬と半助。

「学園は危ない!今行ったら・・・」

「どういうことだ?」

七瀬の言葉に、伝蔵が顔色を変える。

「既に敵が侵入したようです!」

七瀬の両肩をつかみ、代わりに半助が答える。
七瀬の事を自分は信じていると言わんばかりだ。

「お願い行って!
学園のみんなを助けて!」

七瀬が叫ぶように懇願した。

「もう目的は果たした。
ここには用はない。
お前も行くぞ!」

伝蔵が言うと、

「私はまだ行けません!」

七瀬が首を振った。
そして、市原周平を見つめ、

「彼を食い止めます」

そう、まだやることがあった。
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