望んだ事はB
□救出
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「きり丸!大丈夫か!」
「山田先生!」
薄暗い地下にある牢獄。
気配は一つ。
膝を抱えて丸くなっている小さな影に、伝蔵は声をかけた。
その待っていた声に、きり丸が飛び起きて反応する。
檻越しに近付くきり丸は涙目だ。
よほど心細かったのだろう。
「るるるはどうした?」
仙蔵が問うと、きり丸の顔は悲しそうに曇った。
「やっぱり会ってないんですね。
市原先生と話をするために出てから、戻らないんです」
「市原と?」
その名を出すと、文次郎の眉間に皺がよった。
「彼は八方斎と一緒にいる」
利吉が割り込む。
七瀬に会う前に、確認しておいた事項だ。
「きり丸と離されていたとは、厄介だな。
ひとまず、出るぞ」
山田先生が仕切る。
檻の鍵に手をかけ、ガチャガチャと難なく開けてしまう辺り、普段の伝子さんを差し引いてもお釣りが出るくらい、
「山田先生、格好いいっすね!」
きり丸が言い切らないうちに、拳骨が飛んできた。
「余計な事言ってないで行くぞ!」
「は〜い・・・」
そのやり取りに、利吉が笑う。
しかし、まだ終わってはいない。
「るるるを探すぞ!」
「はい!」