望んだ事はB
□一線
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白い空間。
知っている場所。
「カイト!」
七瀬がすぐさま名を呼んだ。
「ここだよ、七瀬」
「これって、また夢の中?」
「ああ、そっちの世界には望みを叶える時にしか来ない」
姿を現したのは、銀髪の神カイト。
久しぶりに見るその美しい容姿。
しかし、好きだった笑顔が今日はない。
恐らく、ここに呼んだ事に関係があるのだろう。
「すまない」
不意を打つ謝罪。
嫌な予感。
言葉が続かなかった。
淡々と話すカイトの声を聞くのが精一杯だ。
話はすぐ始まった。
やはり奴のことだ。
市原周平をこの世界に送ったのは、カイトの嫌いな水神。
七瀬達の存在を知り、同じ事をしたらしい。
水の力を与えたのを手始めに、年齢操作も行っている。
ただ、逆で実年齢は十代の子供。
幼稚な行動や自分勝手な暴言。
大波が突如起きたこと。
思い当たる事が多々ある。
「ここへ来たことが望みだって聞いてる。だから、彼は自分から帰れないの?」
一番知りたいのは、そこだ。
「少し違うかな。
彼には実体がないから」