望んだ事はB

□二人
1ページ/3ページ

学園に戻り、あれから珍しく平穏な日々を過ごしている。
何かが著しく変わった訳でもない。
なのに何か穏やかだ。

放課後。
相変わらず、授業風景はない小説。

るるると七瀬は、落ち葉を集めている。
秋、落ち葉と言えば、焼き芋しか連想してはいけない。
大木先生が差し入れてくれたさつま芋を、委員会で頑張る生徒たちにあげようとるるるが言い出したからだ。

「もっとないと、みんなの分焼けないなあ」

ふと、大きな木を見上げる。

「七瀬!
風でこの木の葉っぱ、落としちゃって!」

「こらこら、落ち葉じゃなくて、落とし葉にすなっ!」

「やっぱ、駄目か・・・」

るるるの目はまだ木を見上げたままだ。
まだ、諦めていないのか、それとも別の思いつきか。

「ねえ」

「何?」

その呼び掛けに構える七瀬。

しかし、るるるの口から出たのは、

「この木に登ってみたいな」

焼き芋には無関係な台詞だった。

「いいよ、登ってみる?」

「出来るの?」

「一人ならよく登ってるけど、るるるの軽さなら多分大丈夫」

「わっ!」

返事も聞かず、るるるの腰に手を回すと、地面を蹴った。

「ちょっと!心の・・・準備!」

「舌噛むよ!」

枝から枝へ、勢いを止めずにジャンプを繰り返す。
ゆっくりやるには更に力がいる。
それに、心の準備は多分明日になっても出来ないだろう。

「はい、着きました。
お姫さま」
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ