望んだ事はB
□利吉の暴走
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「へえ、くの一長屋って、割と広いんだな・・・広いのね」
言い直しながら、キョロキョロと廊下を見て歩く、利吉。
いや今は利子、女装中だ。
「ここが私達の部屋で〜す」
るるるが襖を開けると、
「あ・・・」
当たり前だが、七瀬がいた。
利子と目が合う。
が、先に視線をそらしたのは、利子の方だった。
女装している気まずさもあったが、風呂上がりの七瀬が寝間着姿だったことも原因の一つだ。
「やっぱり美人なんですね」
反対に食い入るように見つめる七瀬。
もはや彼女には、女の子としての利子しか目に入っていない。
中身は利吉であって男性であるという認識の欠片もなさそうだ。
くのたまにバレないように入ってきた。
夜更かしはお肌の何とやらで、彼女達の就寝も早い。
お陰で、誰も部屋には入ってこない。
利子もそのせいか安堵し、更には半ばやけくそで、女子トークに花を咲かせた。
「何で、そんなに化粧上手なの?」
「元がいいから?ナチュラルメイクよ」
「ホントだ。伝子さんの厚塗りとは全然違う!」
「仕事ではするの?」
「女中とかしたよね」
「君は何でも知りすぎだよ・・・」