君と僕。

□ぽっちゃりシリーズ2〜同棲〜
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チチチチッ


小鳥のさえずりが聞こえる。
要は清々しい気分でベットから起き上がった。
一週間まえのあの夜、あまりにも先生が期待させるようなことをするもんだから、おもわず切れて伝えるつもりもなかった思いを伝えてしまった。
当然優しい先生のことだから、遠まわしに振ってくると思ったのに…。



まさか両思いだったなんて…。





ぽっちゃりシリーズ2〜同棲〜





今日は先生と両思いだと知ってから初めての学校。
今まで遠くから見ているだけだったが、今ははれて先生と両思いなのだ。
これからは先生の周りに群がる女子達に嫉妬心を抱くことも、先生と自分との間に距離があると感じることもなくなる。
なぜなら今先生と自分は、つき合っているのだからっ!!!!!!!!!!!!


自分の周りの、すべての生き物が愛おしく思える。すべての生き物が自分を祝福してくれているような気がする。学校に早く行きたくて仕方なかった。
要は完全に浮かれていた。




〜〜〜〜〜〜〜〜





「要、なんか元気ないね。何かあった?」

千鶴、祐希、春が前をきゃっきゃと騒いで歩いているなか、元気なく後ろを歩いている要に悠太がひとり気づいて声をかけた。


「あ?そうか…?」



「うん、朝はすっごい上機嫌だったのに…体調でも悪いの?」

珍しく自分を心配してくれている悠太に、今、自分が思っている以上に暗い顔をしていることを知る。
大丈夫だ、と悠太に一言言ってまた黙って要は歩き出した。


カラスが遠くで鳴いている。夕日で空が綺麗なオレンジ色に染まる。


朝、あんなに楽しみにしていた今日は呆気なく終わってしまい、すでに要は帰路に就いていた。


まあ、よくよく考えてみれば、つき合ったからといって今日からガラッと学校生活が変わるわけでもない。

それに、先生と生徒だと、生徒同士のカップルのように毎日一緒に帰れるわけでもないし、先生は仕事があるんだから休み時間中にずっと話せるわけでもないし…。


そう思えば思うほど、自分はいったい何を期待していたのかと情けなくなる。

朝期待していたぶん、今日何もなかったことに要は落ち込んだ、というよりは拍子抜けしたような気分だった。



(まぁ、今日は先生の授業なかったし。焦らなくてもまだまだ時間はある。確実に今までよりは先生にちかづけてるんだし、少しずつ変わっていけるだろう!)


この時はまだ前向きだった。
付き合ってまだ一週間だ。ゆっくり進んでいこう、と…。





それから一週間


要は自室のベットに沈み込んでいた。
この一週間、思いが通じたあの日から結局何の進展もなかった。
授業中目が合うこともほとんどなければ、休み時間に千鶴達と混ざって先生と話しをすることもたいしてない。



(……なんか、今までと何も変わってない……)



さすがに何もなさすぎる。
ほんとに何も変わってないのだ。はなす回数だってつきあう前と同じ、もしくはそれよりも減っているかもしれない。


普通、好きならもっと一緒にいたいとかもっと話したいとか思わないのか?俺の気持ちも知らないで楽しそうに他の生徒と話しやがって……。
そいつ等と話すくらいなら俺に話しかけろよバカやろーっ!!!


要は、自分が先生に話しかけられないのを棚に上げて、なんの進展もしていないことを先生のせいにして、心の中で散々責めた。


だが苛立ちは十数分で消え去り、今度はジワッと目頭が熱くなった。慌てて枕に顔を押し当てるが、涙はどんどん溢れ出てきて、ついには嗚咽まで漏れてきてしまった。



「…ぅっ……ぅう〜……なんだよっ……ちくしょぉ……っ」



ほんとは薄々気づいていた。



先生は優しいから…



本当は俺のことなんて好きじゃないのに…、




どうしようもなくなって告白してしまった俺を…、




一時的に助けるために自分も好きだと言ったのだろうってこと。



俺の気持ちを受け止めたふうを装って、ながして、しばらくすれば先生へのきもちは一時の迷いだったと思い直して、俺が自然に離れていくのを待つつもりなんだろう。



先生が生徒が一生懸命出した意見を否定しているところを見たことがない。

…優しいから
すべてを受け止めるんだ…。



俺のことだってきっとそうだろ…
でも、


「……そんな優しさ…いらねぇし……っ…」


だが、先生のために自分から別れを告げるつもりなんてない。
せっかく先生と付き合うことができたんだ。
それを自ら手放すなんてできるはずがない。
結局俺は自分のことしか考えていないんだ。
このまま、この関係に嫌気がさして先生から別れを告げてくるまで要は先生の恋人の座に居続けたいと思った。
でも、先生から別れを告げられるのは、それはそれですごく辛い。
じゃあ自分から告げるか…でも────

こんな風に結局なんの答えも出せないまま夜は更けていった。
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