君と僕。
□ぽっちゃりシリーズ2〜同棲〜
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それから更に数日…
やはり未だに何も進展していない。昨日は先生に話しかけられたけど、でも恋人同士で話すようなものではなくて普通に生徒と先生の会話だった。
いったいどうすればいいのか…。
この間の夜、先生は俺のことなんて本当は好きじゃないから話しかけてこないと結論づけたが、それはただたんに俺の予想であって、結局のところ先生が何を考えているのかはさっぱり分からない。
ん〜……どうしたもんか…
要は考えて考えて、考え抜いた末にある方法を思いついた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「うんうん、だいたいのことは分かったわ……」
いい方法を思いついた日から2日もたたないうちに、その方法を実践すべくひさこを家に招き入れた。
幼なじみのひさこにこの話をするのは躊躇われたが、あいにく要には女子の、しかも何でも話せるような友人はひさこしかいないのだ。
要は、長い間先生に片思いしていたこと、半月ちょっと前に二人で映画を見に行ったこと、その夜先生の家に泊まったこと、両思いだったこと、それからほとんどはなしてないこと、この間考えた「本当は好きじゃない説」のこと………。
それらをすべてひさこに話した。
話し終わってしばしの沈黙……
あからさまに気持ち悪がられることはないとは思っていたが、やはり男同士の恋愛事情などいくら幼なじみとはいえ嫌がられるだろうか……?
「……(汗)」
「…ふ〜ん、要がまさか男を好きになるなんてね〜(ニヤッ)」
「…っ!!」
前言撤回、こいつは男同士のを聞いてショックを受けたりするようなデリケートな女じゃなかったわ。
「で?何を協力してほしいの?」
からかったような笑みを引っ込めて、ひさこは身を乗り出した。
ついに本題に入るのかと、要は気を引き締め一呼吸置いてから、意をけして口を開いた。
「…………先生の前で……彼女のふりをしてほしいんだ……」
「………………………は?」
ひさこの間抜けな声だけが要の部屋に響く。
頼む!このとおりだ!と手を合わせて頭を下げる要に、ひさこは心の底からため息をついた。
「あのさ、要と先生って、今つき合ってんでしょ?」
あきれた声でそう言うひさこに要は気まずそうに視線を泳がせた。
「…………つき合ってるけど…」
「だったら可笑しいじゃない、先生の前で私と付き合ってるふりなんて!」
「……そ、そうだけど……」
そういうと要は俯いて黙り込んでしまった。何も言わなくなった要に、ひさこは嫌な顔もせず黙って話し出すのを待っていた。気長に話を聞いてやるつもりらしい。
暫くして要が口を開いた。
「……俺は、先生の本当の気持ちが知りたいんだ…」
「…なら、先生に直接聞いてみればいいじゃん?」
「…直接聞いても先生は優しいからほんとのことはいわねぇよ…」
「……」
「だからひさこが俺の彼女のふりして、それで先生が何も言ってこなければ………」
「…ねえ、じゃあなんで先生はわざわざ好きじゃない要と付き合ってるの?要が心配するくらい先生があんたのこと好きじゃなかったらはじめから先生は付き合わないんじゃない?」
「ほら、さっきも言ったけど…先生は優しいから俺の気持ちを気遣って付き合ってくれてて、だから先生からは多分振ってもこないし、…俺が一時の迷いだったって離れていくのを待っててくれてるっていうか……」
「……でもそれあんたの予想でしょ?」
「………うん…」
俯きながらそういう要は、先生が自分のことを好きか好きじゃないかを確かめる為ではなく、先生が自分のことを好きじゃないことを決定づけるためにこの作戦を実行するという口ぶりだった。
一言で言うと、要には自信がないのだ。
「先生は優しさでそういうことしてくれてるんだと思うけど、生殺しみたいで辛いんだよ…」
「…でも要、その予想あってないかもしれないんだよ?」
「だから、それを確かめるためにひさこに彼女の振りしてもらって先生の反応を確かめるんだよ…」
今まで見たことのないような暗い顔をする要に、ひさこはそのたのみを引き受けることにした。