*original

□君が唱えたその瞬間に
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昨日のあいつの顔が頭から離れない。
それは朝になっても、学校に行っても消えることはなかった。


その日の夕方。
俺は公園いつものベンチに座っていた。
遊具の方では子ども達が遊んでいる。
俺にもこんなときがあったんだなぁ・・・。

そんなことを思っていると流花は現れた。
「修夜っ!早いねっ。」
「そうか?」
「あいかわらずクールだなぁ〜。」
「あいかわらず・・・って昨日会ったばっかりだろ。」
「そうだけど・・・まぁ・・・いいじゃん!!」
「そうだな。」

自然と顔がほころぶ。
俺ってこんなに簡単に笑う人間だったっけ?
今、この瞬間がたのしい。

時計の針がちょうど7時を指しているだろうか。
「・・・星きれいだな。」
「やっぱ・・・星好きなの?」
「なんで?」
「星織っていうくらいだから星、好きなのかなって。」
「苗字は俺が決めるわけじゃないんだから関係ねーよ。」
「だよねっ。あたしも好きなんだ〜。なんか心が落ち着くっていうか、今まであった嫌なことをキラキラ〜って消してくれるのっ。」
「俺も・・・そう思う。」
「どーした?なんかあった?」

俺の顔が暗くなったことを見て悟ったのだろう。
そう。俺は今、なにかが胸に詰まっている。食べ物が詰まったときとはちがうなにか不思議な感じだ。
これは一体なんなんだ・・・?

「実はさ・・・最近学校にいるときとか胸が詰まってる感じがするんだ・・・。うまくいえないけど・・・なんかギュッって掴まれてる感じ・・・?」
「それさ、恋なんじゃない?」
「こ、恋?」

またこんな感情が芽生えてしまったのか。
もう自分の感情のレパートリーの中から消えたと思っていたのに――。

「胸が苦しいってことは、誰かを想ってるってこと。誰かを想ってるってことは誰かのことが好きだってこと。誰かのことが好きだってことは、もう恋をしているってこと。」
「え・・・。」
「つまり、修夜は誰かに恋をしてるんだよっ。」
「そ・・・なのかな・・・・。」

それっきり、黙ってしまった。
俺も、流花も、黙って空を見上げていた。
今日は快晴で満天の星空がある。
何か言わなきゃいけない、だけど何て言えばいいんだろう・・・。

『ねぇ、流れ星がみたいな。』
2人で同時に発した言葉だった。
ささやくように、唱えるように――。

俺は照れ隠しをするように、右手を空へ振りかざした。
すると、光が綺麗な尾を引いた。
まるで魔法のように――。

「あのさ・・・」
「なに?」
言いかけて胸がドクンッと鳴った。

「俺・・・俺が恋してるのは・・・」
いままで、ボーっと開けていた目を見開き、
「流花、お前なんだっ!」
流花が呆然としている。
きっと呆れたのだろう。

「あ・・・じ、じゃーな。」
喉が熱くなるのを感じ逃げるように告げる。
すると、流花は立ち上がった。

「あのさっ!明日は夜じゃなくて、お昼に会わない?!」
「?」
「デート・・・しよっ////」
テレながら小さい声で後付する。

「もう少し・・・ここに居ようかな・・・。」
「あたしも。」

ベンチに座りなおした瞬間、流花の手に俺の指が触れた。
そのときも、胸がリンッと小さくなった。

やっぱり、そういうことなんだ。
俺は願いが叶った。
流れ星って願い事をしてみるのもいいな。

神様、一目ぼれってあるんですね。
それでもいいと俺は想います。
だってそれは、恋の始まりを意味しているのだから――。
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