戦国BASARA

□籠の中の鳥
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「半兵衛、お前が俺とお茶しようなんて、珍しいこともあるもんだね」


俺は今、大阪城の一室で豊臣の軍師
竹中半兵衛に誘われ
お茶をしている最中だった

「ああ、慶次君、君に話したい事があってね」


半兵衛が俺に話し・・・


もしや、


「半兵衛まさか、恋話かい!?」


そう聞くと
半兵衛はサラリと

「まあ、そうなんじゃないかな」

至極冷静に言う

「ええっ!そうなのッ!!」

驚く慶次をよそに、半兵衛は手元にあるお茶をすする


「ちょっ、誰誰誰!?だれなんだよ半兵衛」


「少しは落ち着いたらどうだい?」


「あっ、それもそうだな」


茶碗を一気に空っぽにして、茶菓子を頬張っていく


モグモグモゴモゴ


「で、誰なの、半兵衛?」


「んふっ、それはね」


グラッ

突如 慶次の視界がかすみ
体が傾いた


「あ れ?何か急にねむ、く・・・」

遠のく意識の中で最後に見たのは

自分を見下ろす半兵衛の姿だった







此処は何処だ?

あれ?

此処って確か

大阪城の地下牢?だよな?

(何で俺はこんな所に)

全く状況が理解出来ず
とりあえず立ち上がろうとするが、


ジャラッ


「はあ?何だよ」


首をひねって後ろを見れば
手枷が、はめられていた


「何だってこんなことに」



「おはよう、慶次君、よく眠れたかい?」


暗い地下牢の中にふと現れた人影は
静かにそう聞いた

(この声は・・・)


「半兵衛・・・なのか?」

「そうだよ、慶次君」

「俺を閉じ込めたのもお前か」

「そうだよ、僕だ」

半兵衛はあっさりと認める


「何でんな事!」

怒り


半兵衛は慶次の前まで歩み寄った

「答えろよ、半兵衛」

「・・・」

少し間をおいて

彼は口を開いた

「君が何処へも行かないようにするためだよ」


「俺が、何処へも行かないようにするため?」


「あぁ」

そっと慶次の頬に白い手を添える

「自由に飛び回る鳥を鳥籠へ入れておくように、自由に旅する君が何処へも行かないように・・」

手枷に繋がる鎖に半兵衛が触る


「君を、この地下牢に繋いでおくことにしたんだ」

この言葉に

「ふざけんな半兵衛!俺は籠の中の鳥なんかになる気はねぇ!」

激しく激昂する慶次

「ぁあ、いいねその顔、ゾクゾクするよ」

半兵衛は歓喜の声をあげる


「こっから出せ、必ず誰かが俺を探しにくる、そう長く俺を閉じ込めておく訳にはいかねえだろ?」


そう訊ねると


半兵衛は小さく笑った


「仮にも天才軍師と呼ばれるこの僕が、手を回してないとでも思ったのかい?」


「まさか!」


「ぬかりなく」


「君がとれだけ此処にいようと、誰も君を捜さないし、誰も君を心配しない」

慶次は黙り、何も言えなかった

(こいつは本当に俺を閉じ込めるつもりなのか)


「慶次君・・」


半兵衛は何も言えない慶次の体に寄りそった

「やっと手に入れた僕の慶次君、もう逃がさない、ずっとずっと僕だけのもの」


空なんて目指さなくていい


羽ばたき方だって忘れればいい


全てを失くした君が生きるのは
この籠の中

そして この世界の住人は
君と僕だけでいい


「慶次君、君には僕しかいないんだよ」


「・・・」


(僕には君しかいないように)


end

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