long story
□第一話
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「樹里ー!!早く起きないと恭介が来ちゃうよー!?」
ドタドタと階段をかけ上ってくる音がする。
私は嫌な予感がして、慌ててベッドから飛び起きた。
立夏が私を普通に起こしたことは一度もない。
絶対今日もーーーーー
パァーン!!
私の目の前に色とりどりの紙吹雪が舞う。
「立夏!何で入って来るなりクラッカーをならすの!!」
「あれ!?樹里起きちゃってたの?なぁーんだ 残念…大きな音でびっくりさせようと思ったのにぃー」
頬をぷうっと膨らませている立夏。
そんな顔されたら、嘘でも寝たフリをしていた方が良かったかな…?と思っちゃいそうになるけど……
「まぁいいや、今度寝てたらペンで顔に落書きしよーっと♪」
という立夏のつぶやきに、私は''騙されちゃいけない!!''と改めて心に決めた。
ピンポーン
立夏といつもの様に言い合いしていると、チャイムの音がした。
時計を見ると午前8時…
「恭介が来ちゃった!!立夏、恭介にちょっと待っててって言ってきて!!」
「りょーかーい!」
恭介は毎朝必ず私の家に来てくれる。
てっきり高校生になったら恥ずかしがって来てくれなくなっちゃうのかと思ったけど、こうして2年生になった今でも迎えに来てくれる。
見た目のせいで、恭介を悪く言う人もいるけど、私にとって恭介は大切な幼なじみ。
「恭介ー!樹里が、今日は恭介と一緒に登校したくない、だってさー!アハハー!フラれちゃったね、恭介!!」
…立夏が素直に言うこと聞くわけないか…
っと、早く着替えないと!
玄関でどんな会話が続けられているかを気にする余裕もなく、私は慌てて着替え始めた。
「おい、立夏、樹里がそんなこと言う訳ないだろ?どうせならもっとマシな嘘をつくんだな」
「むー、恭介のばかちん!」
「うおっ!立夏っ、どこに水鉄砲なんて隠し持ってたんだよ!!」
「へっへーん、油断してた恭介が悪いんだよー!もう高2になったっていうのに、何でまだ樹里を迎えに来るのさ!?」
「うっせー!どうだっていいだろ!」
「よくないよ!!樹里にヘンな虫がつかないように守るのは僕の役目なんだからね!!」
「相変わらずのシスコンぶりだな…」
「シスコンじゃないよ!樹里が大好きなだけだよ!」
「それをシスコンっていうんだろーが…」
「おまたせ、恭介っ!!」
本当は髪をしっかりアイロンで真っ直ぐにしてから、恭介の前に現れたかったけど…
「気にすることねぇーよ、どうせ走ったらぐちゃぐちゃになっちゃうんだしさ、髪」
まるで私の心を読んだかの様に発せられる言葉ーーー
やっぱり恭介は優しい。
「あれ?何で制服濡れてるの?」
「……ほっとけ!」