陰陽寮日記 2

□教師体験
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「先生ここ教えてください!」

「はい、どこですか?」

ここは平安時代を遙か過去の時として未だに時を刻み続ける平成の都。
その一角のある中学校の職員室に、主の任を受けて人型をとって教師として紛れ込んでいる人外の影が2つ。

「えっとそれは……困りましたね。天后先生、この化学式はどうすれば解けるんですか?」

太裳と天后だった。

突然振られた質問に驚きながらも、彼女は差し出された問題用紙を覗きこむ。

「……太裳…、先生。あなた私と同じで日本史が専門でしょう?」

そして呆れたような声音で言った。
瞳も言葉と同じ気持ちを如実に表している。

しかしそんな彼女の視線もなんのその。
問題用紙を生徒に返すと、太裳は少し困った顔で言った。

「というわけで、すみませんが化学の専門の先生に質問してください。」

「はーい、ありがとうございましたー!!」

疑問が解決しなかったにも関わらず、生徒は笑顔で教務室を出ていった。
その理由は、2人は気付いてないものの明白で、というのも人気者の新任教師と質問を口実に会話をしたいという生徒が後を絶たないことである。



彼等が学校にやって来てから一週間。
教師としてはあまり器用でない天后を太裳が上手くフォローしながら仕事をこなしていた。

意外にどじっ子な天后は、日本史の授業で教科書に載っていることではなく自分
たちが生きて見てきた歴史を話そうとしたり、特に平安の辺りの脚色された歴史に絶句してしまったりしていたのだ。
いっそ、現代文などの方が楽だったかもしれないと彼女は考えてしまった。

この学校の授業システムで、1クラスの授業は二人一組だったので、隣にいた太裳がそれを綺麗にごまかしてくれていたのだ。


このように2人が教師をやることになった晴明の命とは、この学校は様々な由縁から結界を張っておかなければいけないにもかかわらず、何かの邪気が結界を弱めているからその原因を探り、排除することだった。

しかしこの一週間、一向に手がかりが掴めていない。
そのことに多少焦りを感じていた天后がため息をついて隣の太裳に視線をやると、彼女の焦りなど全く関係ないかのように彼はどこかで購入してきたと思われる眼鏡で遊んでいた。

「なにしているの?」

彼女の問いに太裳は笑って返す。

「いえ、潜入任務といえば変装だと思いまして。」

確かに、確かに彼の言っていることにも一理ある。
が、しかし……。

「人型をとって人間の服を着て人型をとっている時点て変装じゃない」

だいたい普段徒人に顔を見られているわけではないのだから、眼鏡で多少顔の印象を変えたところで意味はないと思われる。

「そう言われてみるとそうですね、あはは」

そんな事を言いながらしきりにメガネを気にしてズレを直している彼の姿は非常に絵になっていた。




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