陰陽寮日記
□新月の日
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昌浩は目をさまして、何か違和感を感じた。
視界に霧がかかったようにはっきりしない。
しばらくするといつも通りに見えるようになったので、改めて自分の部屋を見回して見る。
不思議なことに、いつも自分の枕元で丸くなっている物の怪の姿がない。
「あれ…?」
おかしいな。と昌浩が思った丁度そのとき、彰子が自分を起こすために部屋に入ってきた。
「おはよう昌浩。あら…今日はちゃんと起きているのね」
「おはよう彰子。ねえ、もっくんしらない?」
こんなに朝早くに物の怪が出かける理由など思いつかなかった昌浩は、彰子ならどこかで見かけたかもしれないと思って聞いてみた。
すると、彰子の口から驚くべき答えが返ってきた。
「何言ってるの昌浩?もっくんならそこでまだ寝ているじゃない。」
「え?どこ?」
「ほら、昌浩の枕のすぐ左…」
彰子の言葉どうりの所へ視線をやっても昌浩に物の怪の姿は見えない。
これはおかしい。
「昌浩…もしかしてあなた…。」
「うん、見鬼がなくなっちゃったかもしれない。」
昌浩の見鬼が消えてしまったことに驚いた彰子があわてて物の怪をおこす。
自分で確かめて、確かに昌浩の見鬼がない事を知った物の怪は昌浩に見える位に顕現した。
しかし、昌浩は見鬼だけでなく力を全て封じられていたときも物の怪だけは見えていた。
そこで試しに、火を起こす程度の簡単な術を使ってみたが、何もおきなかった。
どうやら昌浩が失ったのは見鬼だけではないらしい。
しばらく唖然としていた昌浩だったが、とりあえず直丁に見鬼は必要なかったので昌浩は出仕する事にした。
「おれ、どうしちゃったんだろうね、もっくん?」
「ん…あぁ、う〜ん…おまえがまだ半人前のせいで力が安定してないのが原因なんじゃないか?」
「半人前…確かに力が使えるようになってから1年くらいしかたってないもんな。」
「とりあえず、ここで考え込んでいても仕方がない。遅刻するぞ?」
「え?うわっ!もうこんな時間!?」
とりあえず、陰陽師としての力以外ならなんの異常もなかったので昌浩はいつもどうり出仕することにした。
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