昌彰小説

□未来の妻
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『未来の妻』



「できたわ。」

そう言って彰子は今しがた縫い上げたばかりの衣のしわを伸ばす。

彼女の縫い物や繕い物の腕は、安倍家にやってきたその当時と比べて格段に上がった。

それもそうだろう、彼女かここに来てからもう6年の歳月が過ぎ、今年で18歳となる。
昌浩はその一つ上の19歳だ。

「彰子姫、本当にお上手になられましたね。」

彰子が縫い上げた衣を見ながら天一が言う。

「流石は未来の妻だな。」

その横で朱雀も笑った。

誰の…とは聞かなくてもわかる。
彼等は彰子のことを昌浩の未来の妻として見ているのだ。

彰子も、いつかはそうなればいいと思いながらこの数年間すごしてきたし、昌浩も彼女を特別な女性として大切にしてくれているのが伝わってくる。

しかしそれでも言葉にされるとやはりまだ恥ずかしい。

朱雀にそう言われた彰子は思わず顔を赤らめた。


そんなところに間が良いのか悪いのか、昌浩が物の怪と共にやってくる。

「彰子、今日は少し仕事で遅くなりそうだけど…」

戸を開けてそこまで言った昌浩は、彰子が顔を少し赤らめ、朱雀と天一が笑っているのを見て問いかける。

「どうした?」

しかし彰子に、

「なっ…なんでもないのよ、気にしないで。」

と言われてしまったのでそういうことにしておくことにする。

その光景を見てなんとなく事情を悟ってニヤニヤしている物の怪に、昌浩は額の当たりに指弾をお見舞いした。

「痛っってぇなあー!!なにすんだよ!」

前足で額を抑えながら文句をいう物の怪に昌浩は、

「気持ち悪くニヤニヤしてるからだよ。」

と、あっさり抗議を蹴り飛ばす。

「ひっでー!!」

何年たっても変わらないこのやり取りを、当事者二人以外のその場にいる者は皆微笑ましく見ていたのだった。


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