昌彰小説
□香合わせ
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始まりは、朝の他愛のないひと時だった……。
「はい、昌浩。これ新しいにおい袋」
そう言って彰子が渡してくれたのは、この間の出雲での死闘で泥まみれになって匂いが飛んでしまったものの代わりの新しいにおい袋だ。
「ありがとう。それにしても彰子は凄いね、こんなに良い香りの香が自分で調合できるんだから」
昌浩が感心したように言うと、彰子は
「これくらいなら昌浩にもできると思うわ…。やってみる?」
と、言った。
それを聞いていた物の怪が、
「やめとけ。昌浩の不器用さは本当にどうしようもないんだから。」
と言ったので、ムキになった昌浩が、
「なにを〜…!そこまで言うならやって見せてやる!!」
と、物の怪に向かって吼えた。そして彰子に向き直り、
「というわけで彰子、指導よろしく!!」
と言った。
こんなわけで、今回の昌浩の人生初の香合わせが始まったのだ。
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