陰陽寮日記

□また逢えるから
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平安の世…

大陰陽師として名を馳せた安倍昌浩は、今まさに天命を迎えようとしている。
その周りを、神将たちが囲っている。

「昌浩…!!」

「ごめんな。俺、後継を見つける事ができなかった。でも、きっといつか…俺やじいさまの魂を受け継いだ人間が生まれるから…それまで、待ってて…」

それを最後の言葉として、昌浩の魂はこの世から離れた。



それから1,000年位たって、時は平成となった。
神将たちは昌浩が言った言葉を信じて、普段は異界にいるものの、たまに人型をとって人界にまぎれこんだりしていた。
昌浩や晴明がいつ生まれ変わるか分かららかったので、神将は平安が終わり、鎌倉、江戸、明治、大正、昭和、そして平成の全ての時代を半分人間とともに生きた。
そして、探し続けた。
再びあの暖かい存在と出会えることを信じて…。



教室の窓から空を見上げている視線がひとつ。
現代に生まれ変わった安倍昌浩だ。
なんの因縁は分からないが、前世の記憶と力をもち、同じ名前で生まれてきた。
彼は今14歳、中学生で日本史の授業の真っ最中だ。
やっている内容がちょうど平安で、取り上げている人物が‘安倍晴明’と‘安倍昌浩’だった。
先生に、安倍昌浩は安倍晴明の孫で……と説明されて危うく‘孫言うな!’と叫んでしまいそうだったが何とかこらえた。
事実の部分もあるが、まったくのでたらめまであり、1000年も時がたつと、歴史はこうも脚色されるんだなぁと途中までは聞いていた昌浩だったが、もう飽きた。

自分たちがおいていってしまった神将たちは今頃どうしているか…。

前世を思い出してから昌浩はずっと考えていたが、分からなかった。
見鬼の力はあったし、自分の中の霊力も感じる事ができるので術も使えるのだろうが、昌浩はまだ試した事がなかった。
生まれてこの方、術を使わなくてはならないような事態に陥らなかったからだ。


その日、日本史でレポートを書く宿題が出された。
昌浩は、宿題などはすぐにやってしまうタイプだったので、その日のうちに図書館へ向かった。




―――異界。


「おい騰蛇、また人界に降りるのか?」

「勾…。あぁ、いってくる。」

「最近多いな。」

勾陣の言葉通り、紅蓮は人界の時間でここの所毎日人界に降りていた。

「あぁ、昌浩や晴明を探しているうちにな、図書館という書庫のような場所を見つけて。面白くて通っていた。」

「そうか。…あいつら、今どうしているんだか。まだ生まれ変わっていないのだろうか…?生まれ変わっていたとしても私たちを覚えている保障は何もない。普通の人間は前世の記憶などもっていないのだから。」

それは紅蓮の考えていたことと同じだった。
しかし、そうは言っても探さずにはいられなかった。
もしそうだったとするならなおさら、できるだけ多くの時を人界に下って手がかりを探したい。

「もし…そうだったとしても、俺は昌浩を探す。」

そう言って紅蓮は人界に下って行った。




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