昌彰小説
□買い物
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「すっごいかっこよかったよね!!」
「また会えるかなー?」
昌浩と彰子が教室に入ると、クラスの数人が騒いでいた。
そのグループの一人と仲の良かった彰子が、何事かと聞いてみる。
すると、彰子が声をかけた者以外の何人かも加わって説明してくれた。
「あのね、昨日買い物の帰りにひったくりがいたんだ。」
そう言って話し始めた女子の話によると、ひったくりをした者が物凄い勢いでこちらに向かって走って来たのを、ちょうど隣にいた女性が鮮やかに捕まえたそうだ。
そして…。
「その人がすっごい美人で綺麗な人だったのー!!」
と、顔を真っ赤にしながら力説する。
その時一緒にいたであろう彼女の友人たちも口々に、補足を始めた。
「その女の人と一緒にいた男の人もすごくかっこよくてね!!」
「うん、美男美女ってかんじでさ。あぁ…目の保養になったわー。」
本当に感動したのだろう。
またその時の事を思い出しているであろう彼女たちの目線はどこか遠かった。
「そう、そんなにかっこいい人がいたの。」
「わざわざありがとう。」
大体の話がわかった二人は、お礼を言ってその輪を離れようとした。
しかし…
「で、今日も会えるかどうか昨日あの人たちを見た場所に行ってみるの。一緒に行きましょう!」
と、腕をガシッとつかまれて誘われた。
「いや、別に俺たちは…ねえ、彰子?」
「ええ…」
美男美女なら安倍家で十分見慣れているので今更それほど興味の持てなかった二人が断ろうとすると…。
「何言ってるの!美しいものは人類共通の財産よ!拝まなくてどうするの!アレを見ないのは罪よ、罪!!」
と、理不尽な事を真顔で言われてしまった。
その後も少しばかり抵抗してみたのだったが、彼女たちの熱意に押されてついに昌浩と彰子も現場に連れて行かれることになってしまった。
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