□紅犬の独占欲
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寝室の障子を開けると、布団の近くに人影がある。

「…た、隊長?何してんすか?」

「漸く来たか、恋次」

「え、一体いつから」

「ずっとだ」

「ずっと!?」

驚きすぎて目が真ん丸になる。

「…松本、乱菊に全て聞いた」

「っ、」

呑み屋の時のか。
やっぱり乱菊さんは危ねえ。全部言っちまうとは思わなかった。

「お前が見たと云う女はお前が思うような関係ではない」

「でも、腕組んでたじゃないっすか!」

「あれはしつこい故、諦めたのだ」

「そ、んな」

しつこいからって…

こんなに悩んでたのに檜佐木さんが言うように早とちりだったのか?

「それより、私と云うものがありながら檜佐木の部屋に泊まるとは…」

「あれは、酔いつぶれた俺を連れて帰ってくれただけっす!」

「何もされていないだろうな?」

「当たり前です!」

疑い深く俺を見つめる隊長を睨んだ。

「恋次、こっちへ来い」

「?」

ゆっくり近づけば腕を強く引かれ、バランスを崩して隊長に倒れ込んだ。

「な、隊長?…んんっ」

乾ききっていない少し濡れた俺の髪を梳きながら柔らかいキスをされる。

「んんっん、隊長っ」

「こんな格好のお前が悪い」

「はい?」

眉を寄せた俺に隊長はふんっと鼻を鳴らして少し口角を上げた。




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