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□紅犬の独占欲
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「……最低、だ」
俺は、遠くから2人の背中を睨みつけながら拳を握りしめた。
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「俺にどうしろって云うんすかね!」
「まあ、落ち着けって阿散井」
「落ち着いてなんかいられねえっすよ!檜佐木さん、今夜は付き合ってもらいますからね!」
「分かったから落ち着けって」
とある呑み屋の店内、無心で酒を煽りながら喚く俺を檜佐木さんは偶然見つけたらしい。
俺を宥めながら隣に座って俺を見つめてる。
「なんすか、見られてると酒が不味くなりますよ」
「いや、今日は随時と荒れてんなって」
「っ、俺にもいろいろあるんですよ」
昼間に見つけた2人の背中。
あれは我が隊の隊長と腕を組んだ、見知らぬ綺麗な女。
衝撃的だった。
「…で、お前は浮気だと思ったわけ?」
「浮気以外に何があるんすか!」
「ん〜、お前の早とちりかも知れねーぞ?」
「でも腕組んでたんすよ?…それに、男の俺より女が良くなったとか」
「あー、それはないんじゃねえか?あの朽木隊長だぜ?まず、浮気なんてしなそうだけどな。」
「あら修兵、浮気って言った?朽木隊長もそーゆーとこあるのね!」
「ら、乱菊さん!」
いつの間にか、俺の背後には乱菊さんがいて、楽しそうに笑ってた。
どうやら聞かれてしまったらしい。
「まあ、精々頑張りなさ〜い」
ひらひらと手を振りながら去って行く乱菊さんを呆然と見送る。
「っあ、やべっ」
乱菊さんが見えなくなると同時にぐらりと視界が歪んだ。
「阿散井?おい!しっかりしろって!」
檜佐木さんの声を聞きながら、俺は意識を手放した。
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