□眠れぬ夜は、
1ページ/1ページ










「恋次、」

「っ、隊長…?」

もう皆寝静まっているはずの時間。
ただただ明るい月を見上げる俺の後ろに、いつの間にか隊長がいた。

「何をしている」

「特に何も…月が綺麗だなぁって思っただけっす」

首だけで振り返り、隊長の姿を確認してからまた月を見上げる。

起こさねえように、静かに布団を抜け出したはずだったんだけどな。
やっぱり起こしちまったか。

「眠れぬのか?」

「違いますよ。月を見にきただけっす」

「私を起こしてまでか」

「そ、それは気を付けたつもりだったんすけど」

しどろもどろになる俺を見た隊長は呆れたようにため息をついた。

「あの、起こしちまってすいませ」

「恋次…、意地を張るでない」

「な、意地なんてっ…んん!?」

否定しようとした俺の顎をクイッと持ち上げ、隊長は自分の唇で俺の唇を優しく塞いだ。

「っはぁ…た、隊長?」

「眠れぬのならつまらぬ意地をはらずに眠れぬと申せ」

「………」

「仕方がない故、お前が眠るまで抱きしめていてやろう」

やっぱり隊長には叶わねえ。俺の事はすべてお見通しだな。

「隊長っ」

「…何だ」

「やっぱり、何でもないです」

「そうか。」

隊長のことだ。どうせ俺が言おうとしたこともお見通しなんだろ?

「隊長、」

「うるさいぞ、恋次」

「あははっ」

俺、隊長といると幸せだ。
隊長の腕の中で温もりを直に感じながら、俺は静かに目を閉じる。



眠れぬ夜は、大好きな隊長に抱きしめて貰いながら眠りにつこう。
きっと。いや、絶対に。

月を見上げるより効果的に決まってるんだ。







.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ