2つの世界の御伽噺
□4ページ 過去の烙印(ラクイン)
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『母さん!父さん!今日は新しい技を覚えたんだ!!』
『まあ。すごいじゃない』
『流石、父さんと母さんの息子だな』
”お前を俺の弟だって自慢できるのがすっげえ嬉しいよ”
『そうだな。イーズは出来が悪かったからなあ…』
”ちょ!?それ本人の前で言うなよ父さん!!”
『ははっ冗談だ冗談』
『イーズも十分立派よ』
”母さんだけだよー。俺をかばってくれるのはー”
△△△
早朝。
「!!!!……はあ………」
俺は慌てて飛び起きた。
すごい懐かしい夢を見たな。皆で食卓を囲んで談笑していた。俺と、父さんと、母さんと、
……アイツが。
俺は上半身を起こして頭をかいた。
今何処に居るのかも、ましてや生きているのかさえわからないアイツ。俺の大切な人を2人も奪ったアイツは、俺の弟だ。
何の意図を持って殺したのか未だに謎だった。
家族の仲は凄く良かった…と思う。
そこまで不自由な暮らしでもなかったから、金に困るような事は殆どなかった。
何で両親を殺さなければならなかったんだ。
自分を育ててくれた両親を。大好きなはずの唯一無二の存在を。
…愛していたはずの、家族を。
家族全員が憎かったのなら、俺もとっくに殺されてるはずだ。なのに何故俺は生きている?
「…気分悪くなってきたな」
普段使わない知恵を働かせるとすぐこうだ。
難しい事はあまり考えない方がいいな、うん。
水でも飲んでこようか、とベッドからのそのそと出る。ついさっきまで安眠していたであろうフィリアは、もういなかった。隣のベッドが綺麗に整頓されている。
…さすがに添い寝はさせてもらえなかった、残念。(当然だろ、とか思った奴出てこい)
「はあ…寝醒め最悪だなあ…」
今日泊まった宿屋は比較的統率されているようだった。寝込みを襲う輩もいなかったしな。久しぶりに安心して寝れると思ったんだけどなー。夢のせいで台無しだ。
「ふあぁあ……って、のわあっ!」
欠伸をしていて足元に目がいっていなかった。盛大に何かに躓いてしまった。
そりゃあもう、顔面からドカンと。
「っ〜〜〜〜!!」
痛すぎて声にならない叫びを上げた。
いや、ホントマジ痛い。
「ぐわあっぁぁあぁぁ…」
悲鳴を上げたい所だが、そんなに俺は女々しくないので我慢。何とも言えない地を這うような声が自分から出た。
「何なんだよ…まったく…どっちかの荷物か?」
立ち上がり半ギレ状態になりながら足元へと視線を向ける。
…すると、
「………なっ……」
酷く眩暈がして、記憶が飛びそうになった。
そこにあったモノは――。
赤い花束。
「う……うわあああぁぁぁあっぁぁあぁ!!!」
人の血で真っ赤に染め上げた、菊の花束だった。
...end