2つの世界の御伽噺
□7ページ 霊魂
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「……」
暗い道を進んで行く。
イーズは若店主に任せて、私は”探しモノ”へと足を運ぶ。
毎回、毎回あの贈り物――純血をプレゼントしてくる”奴”の居場所を掴んだ。
イーズが目を覚ます前にブッ倒そうと思い、奴のアジト…というか隠れ家まで向かっている。
どういう訳か奴は、イーズばかりを対象に狙ってくるので、不審に思っていた。旅の行き先でいっつも血関連のモノが置き土産されているので、流石にイーズには言えないと自己判断して、イーズが寝てる間に霊魂(レイコン)を使って情報収集していたが…。
隠れ家は、私達が移動するのと同じように転々としていたので、見つからない訳だ。
ま、同一犯となれば話は早かった。
奴を血で塗れさせて、霊魂を使用して死ぬより辛い地獄を拝ませて―――。
イーズの方が何倍も苦しかった筈だ。こんなのまだまだ序の口。
「(…それにしても)」
周りの音が、無い。
…いや、人気(ヒトケ)の無い道を歩いてるから人の気配が無いのは当たり前なんだけど…。
様子がおかしい。
風の音も、鳥も、虫も、自分の足音さえも―――。
「!!??」
気づいた時には遅かった。
周りの景色が歪み、足場が崩れる感覚。
―――呑まれる。
「くっ…【霊界に帰らざる魂、我は異界より現れたりし能力者である】!!」
急いで霊魂を呼び出し、時空が歪むのを一時的に止める。
私の身体は霊魂により、淡い光に包まれている。こういう時に思うけど、本当、霊魂って便利過ぎる。
体力が無いと霊魂の力を最大限発揮できないけれど、基本何でもアリだ。
霊魂は、死体から剥ぎ取った魂。
いわば、死者の魂である為、一つ一つ全く違う魂(モノ)だ。知力や能力も様々で、それこそ十魂十色。
魂は、この世に未練のある者だけが霊魂として生まれ変われた。いくら殺人鬼だろうと、妙な生き物だろうと関係ない。
そんな変な霊魂の決まりのせいで、人間並みに学力のある霊魂もいるくらいだ。
会話出来るモノもあったり、凄いのでは人間に憑依するモノもある。
ちなみに今呼んだのは、空間能力に長けたモノだ。
「ふう…随分な挨拶してくれちゃって…」
半分キレながら辺りを見回す。こういう事が出来るのは、能力者だけだ。
まだ近くにいないかと、キョロキョロと伺えば…。
「…見つけた」
不敵に微笑む、一人の男と目が合った。
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