桜ヶ丘生徒会長日誌
□生徒会長と腐男子
2ページ/53ページ
そもそも、嵐が今の生活に疑問を思い始めたのはこの腐れ縁の友人がきっかけかもしれない。
「おい、クロ」
いつでもどこでも寝てしまう嵐の腐れ縁の友人、クロ。嵐と同じ幼稚園からの古株で、誰の前にも滅多に姿を現さないというので有名だった。
嵐はいつものように空き教室で寝ているクロに声をかける。というより、台にしている机を蹴った。
「…うるさい……」
「起きろ、クロ」
「……なんで」
どれだけ寝ても、クロは常に眠たそうにする。嵐はクロが自力で起きるなんて奇跡を待つ気はなく、呻くクロを無視して机を蹴り続ける。
「暇だから」
クロになぜかと聞かれ、嵐は憮然に言い放つ。
「……適当に遊んで来いよ……」
それは暗に、どっかに行って誰か抱いて来いと言っていた。
「ちっ」
明日は入学式で校舎に残っている生徒は少ない。何より、そんな気分ではなく、嵐は舌打ちをする。
何度挑戦してもクロは起き上がる気配を見せない。嵐は潔く諦めることにした。
「……わかった。適当に釣る」
もう暇を潰せるなら誰でも良い。気分が乗らないなど言ってられない。
嵐はクロに背中を見せて踵を返す。
「おい……奏」
「うっせぇ、寝過ぎでそのまま死にやがれ」
誰にも姿を見せず、寝起きは最悪で相手を泣かすほど。そんなクロだが、腐れ縁の嵐の前ではまともに起きるし居場所も知らせている。たまに数時間、分からない時もあるが……。
とにかく、そんなクロが呼び掛けに応えないのがムカつく為、嵐はクロが呼び止めるのを無視する。
「おい……」
「うっせぇ、黙れ」
「…悪かったって……」
ふわりと後ろからクロに包まれた。背丈は同じなので、クロの鼻息が首筋を掠める。
くすぐったい。
でも、それは言わずにクロの腹部に回っている腕を外そうとした。
.