青春 STORY

□一夏の思い出
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 -シャッ-

朝、制服姿の少年が、カーテンを開け二段ベッドの上で寝ている少年に目をやった。
溜息をして、寝ている少年に近づき、声をかけ起こそうとしていた。

「…ろ…きろ…」
「ん〜…ぁと5分…」
「さっさと起きろ!このバカ!!」

ドゴッ!!!

次の瞬間、俺の腹部に激痛が走った。
イラツキを隠せない制服姿の少年が、布団に潜って気持ち良く眠っていた俺へと、飛び蹴りを喰らわせていたのだ。
そのあまりの凄さに、寝ていた俺は蹴られた衝撃で壁に衝突し、悶え苦しんでいた。

「ブルァアッ!!」

この悶え苦しむ少年の名前は『高橋 郁哉(たかはし ふみや)』。
中学2年で、肌も程よく焼けているテニス好きなスポーツ少年だ。
スポーツ好きなのに、なぜかあまり痩せないのが悩みだ。
これでもこの話の主人公である。

そして、見事な飛び蹴りをした制服姿の少年の名前は『永島 謙二郎(ながしま けんじろう)』。
郁哉とは対照的に、色白の痩せた文科系の少年だ。
謙二郎も中2だが、生徒会の会長を任されている。
女子の間では、背が高く、運動神経抜群で、成績も優秀でかっこいい!と結構モテモテだったりする。
本人いわく「興味ない」とのことだ。
2人は小学校からの幼馴染で、クラスメイトでもあり、一応親友だ。

俺達が通う学校は、街から少し離れた所にあるため、寮が設置されているのだ。
まぁ、寮と言っても普通のマンションと変わりないのだけど…。
ちなみに俺は謙二郎と、2人で1室使わせてもらっている。
普通は1室に3〜4人で住むのだが、そこはどうやら謙二郎が権力を使ったようなのだ。
そして、俺は毎朝謙二郎によって叩き起こされてるんだけど…

「…何も…殴ら…なくても…」
「お前が起きねぇからだ。あと俺がしたのは飛び蹴りだ」

淡々と言葉を吐きながら、眼鏡を装着する謙二郎の後ろで、未だに悶えてる郁哉…。
これが2人にとっては、毎朝習慣的に行われている。

「さっさと用意しろよ、また遅刻するだろ」
「まず…謝って欲しいです…」
「何故?」
「…もぅ、いいです…」

二人のショートコント(?)の途中に、扉を誰かがノックした。
俺たちの返事を待たずに、制服姿の可愛らしい男の子が顔を見せた。

「二人とも、起きてるぅ?」

この子は『木村 遼希(きむら はるき)』。
俺たちとは小さい頃からの幼馴染で、いつも俺たちの影に隠れていた男の子だ。
昔から気が弱く、何かあるとすぐ涙を流しながら俺らに駆け寄って来ていた。
ちなみに俺達とは1つだけ年が違い、遼希は今年この学校に入学してきた。
入学当初から、俺達2年の間では「可愛い子が入学してくる」と早くも噂され、入学式には皆興味津々で遼希を見ていた。
遼希もどちらかと言えば、俺と同じタイプでスポーツ、特にサッカーが大好きなので今はサッカー部に所属している。
ちなみに遼希もこの寮に住んでるのだが、1人で1室使ってるらしい。
それもまた謙二郎の権力のおかげらしいけど、ほとんど遼希は俺達の部屋にいるので、あまり意味はないみたい。

「おはよう、遼希。今日も早いな」
「おはよぅございます、謙ちゃん」

謙二郎と遼希は、俺と出会う前、つまり保育園や幼稚園からの付き合いなので、遼希も謙二郎のことを『謙ちゃん』とちゃん付けしている。
ちなみに俺が『謙ちゃん』と呼ぶと、何故か謙二郎の右ストレートが飛んでくる。

「…郁哉くん、また寝坊ですか?」
「あぁ、そのようだな。まぁ俺らは気にせず朝食といこう」
「はい!」

さっきまで悶え苦しんでいた俺は、いつの間にかまた夢の世界へと旅立っていた。
人はそれを気絶というのだが…それは置いておこう。
俺はまだしばらく眠る事にした。
正直、学校なんてダルいだけだしね。
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