LOVE STORY

□憧れと恋愛ー前編ー
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僕って…ほんとに駄目だなぁ…


僕の名前は『木村遼希』。
今年、念願の天才てれびくんのてれび戦士になったんだけど…
初めてのレギュラー番組だったし、生放送もあったので、いつも緊張の連続。
なので、いつもNGを出してしまうし、生放送では噛んじゃうんだ…

「ハァ…もう最悪だよ〜…」

僕が今いるのは、NHKの近くにある廃ビルの屋上。
いつも落ち込んじゃったりすると、ここに来て、反省会をしている。
僕のお気に入りの場所!
今日も撮影が終わって、ここに来ている。
でも、時間が遅いからもう真っ暗だよ…
ちょっと怖いし…

「なんであそこで噛んじゃうんだよ〜…」

僕は新人だけど、年下の子もいるから、かっこ悪い姿は見せたくないし…
頑張ろうと思っても、いつも失敗…
僕…どうしたらいいんだろう…

「誰!?」
「ふぇっ?!」

その時、急に後ろから声を掛けられて、変な声で返事をしてしまった。
扉の所を見ると、ライトを持った誰かがそこにいた。
ライトが眩しすぎて誰かわからない…
でも聞いたことのある声だなぁ…

「遼希?」
「え?」

その人はゆっくりだけど、僕に近づいてきた。
近づけば近づくほど、ライトが眩しい…
近くに来て、ライトを消してくれたおかげで、誰かわかった。

「ちひろさん?」

僕に声を掛けてきたのは、同じ天てれにずっと出ている、先輩の村田ちひろさんだった。
ちひろさんは僕に近寄り、安心したような顔をしていた。

「よかった〜。誰かと思っちゃったじゃ〜ん!」
「ご、ごめんなさい…」

僕は何故か悪い気がして、謝っていた。
頭を上げると、ちひろさんは笑っていたなぁ…

「アハハ〜ッ!なんで謝んの〜!?遼希おもしろ過ぎ!」
「ご、ごめんなさい…」
「また謝ってるし!」

何故ちひろさんがここに居るんだろう?
ここは僕だけの秘密の場所だったんだけどなぁ…

「っていうか、何で遼希がここに居るの?」

それは僕のセリフですよ…

「ぼ、僕は…あの…その…いつも、ここで…」
「もしかして、反省会?」

えっ!?
なんでわかったの!?
僕は驚いて、目をパチクリさせていた。

「なんで…」
「なんでわかったかって?だって私もそうだもん」
「え?」
「私もね、新人の時から、ここでいつも反省会してるの」

ちひろさんでも、反省会みたいなのするんだなぁ…
ちひろさんは、僕から見たら、完璧って言えるほどだった。
NGは出さないし、皆を引っ張ってるし…

「あの…ちひろさんは…」
「ストップ!その『ちひろさん』っていうの止めて!」
「え?でも…」
「皆みたいに、ちーちゃんって呼んでよ」

そんな…先輩をそんな風に呼べないよ〜…
僕が困っていると、ちひろさんは笑顔で話し続けてくれた。

「あのね、私がそう呼んで欲しいの!だからお願い!ね?」
「は、はい…」

-ドキッ-

え?
何、この気持ち…
何だか、変な気持ち…

「遼希〜」
「はい?」
「あんまり気にし過ぎちゃ駄目だよ?今日失敗したら、明日頑張ればいいじゃん!」
「で、でも…僕、失敗ばっかりだし…」
「肩に力入り過ぎなんだよ〜!明日からはリラックスしてやろう!?」
「は、はい…」

僕はその日から、ちひろさんを『ちーちゃん』と呼ぶようになった。
何故かと言うと、先輩の言う事は絶対だし、あの時の笑顔…
忘れられないんだよねぇ…
それに、あの日のちーちゃんの言葉が、僕を勇気付けてくれたんだ。

『リラックスしてやろう!』

僕は、体に巻き付いていた見えない鎖が取れた気がした。
ちーちゃんって…さすがだなぁって思ったし。
その日は、ちーちゃんと一緒に帰っていった。
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