長いコトノハ駄文
□揺蕩う糸の…
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「…なにかあったのかな?…久しく私を呼ばなかったのに」
四月一日の瞳に映る遙の表情はにこやかではある。
「…別に呼んだつもりは、」
四月一日は見透かされるような遙の視線から逃れるように逸らす。
「嘘」
無理矢理顎を引かれ、遙の方に向かせられる。
「…ちゃんと、私の目を見て」
「!…」
遙の瞳に映し出される、四月一日。
四月一日は、ため息を一つ落とし、ゆっくりと言う。
「…遙さんに、」
「…聞きたいのは、これの事だよね」
遙が懐から取り出し、見せる…紅い糸の束。
「…!…これは」
四月一日は遙の手から紅い糸を受け取る。
「…“君尋”が“遙”に」
「…東国に行く“遙”が“君尋”に、せめてもと縁の品をと…それがこれ」
手の中にある、紅い糸は色も褪せてはいるが、確かにあの時の品。