長いコトノハ駄文

□揺蕩う糸の…
2ページ/9ページ

「…なにかあったのかな?…久しく私を呼ばなかったのに」

四月一日の瞳に映る遙の表情はにこやかではある。

「…別に呼んだつもりは、」

四月一日は見透かされるような遙の視線から逃れるように逸らす。

「嘘」

無理矢理顎を引かれ、遙の方に向かせられる。

「…ちゃんと、私の目を見て」


「!…」

遙の瞳に映し出される、四月一日。
四月一日は、ため息を一つ落とし、ゆっくりと言う。

「…遙さんに、」


「…聞きたいのは、これの事だよね」


遙が懐から取り出し、見せる…紅い糸の束。

「…!…これは」

四月一日は遙の手から紅い糸を受け取る。

「…“君尋”が“遙”に」

「…東国に行く“遙”が“君尋”に、せめてもと縁の品をと…それがこれ」

手の中にある、紅い糸は色も褪せてはいるが、確かにあの時の品。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ