長いコトノハ駄文
□紅葉のきみへ …前編…
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寺の1日は早い。
父は夜も明け切らぬ時間からお勤めをしている。
母はあさげの用意中で。
寺の息子であるおれはいつもの日課である庭の掃き掃除を始める。
さわさわ…。
朝の静寂さと髪を揺らす風は清らかなもの…。
前に四月一日もここは清浄なところだと言っていた。
ふと線香の香りが漂ってきた。
その香りに導かれるようにそこに着いた。
そこには黒いスーツに身を纏った長身の男性の姿があった。
おまけに右手に着けてる手甲も昔のままで、
「一条…」
ゆっくりと振り返った彼は懐かしい眼鏡くんで。
「相変わらずの陰険メガネですね」
「…お前も相変わらず無表情だな、遙様と違って」
「祖父さんの墓参りですか」
「今日のついでに、な。忙しくて墓参りもこれなかったし」
ふと目をやると祖父の墓には綺麗な花があげられている。
その花は何故だかわからないが清々しさがあった。
「一条…今日何かあるのか?」
一瞬彼は驚きを見せたがゆっくりと話す。
「相変わらず感がするどいな…、ここに来るようにと夢のなかで遙様に言われたんだ」
「…祖父さんが夢に?」
百目鬼は声を上げた。