長いコトノハ駄文

□紅葉のきみへ …前編…
2ページ/12ページ

寺の1日は早い。

父は夜も明け切らぬ時間からお勤めをしている。

母はあさげの用意中で。

寺の息子であるおれはいつもの日課である庭の掃き掃除を始める。

さわさわ…。

朝の静寂さと髪を揺らす風は清らかなもの…。

前に四月一日もここは清浄なところだと言っていた。

ふと線香の香りが漂ってきた。

その香りに導かれるようにそこに着いた。

そこには黒いスーツに身を纏った長身の男性の姿があった。
おまけに右手に着けてる手甲も昔のままで、

「一条…」

ゆっくりと振り返った彼は懐かしい眼鏡くんで。

「相変わらずの陰険メガネですね」

「…お前も相変わらず無表情だな、遙様と違って」

「祖父さんの墓参りですか」


「今日のついでに、な。忙しくて墓参りもこれなかったし」

ふと目をやると祖父の墓には綺麗な花があげられている。

その花は何故だかわからないが清々しさがあった。

「一条…今日何かあるのか?」

一瞬彼は驚きを見せたがゆっくりと話す。

「相変わらず感がするどいな…、ここに来るようにと夢のなかで遙様に言われたんだ」


「…祖父さんが夢に?」

百目鬼は声を上げた。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ