長いコトノハ駄文
□金色の時の間(はざま)に
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「…祖父さま、夕餉の用意が…」
と本堂へ向かう渡り廊下からそれは見えた。
学ランを着た少年が、祖父に飛びかかっていく所を。
「…祖父さ」
少年は叫びながら飛びかかっていく。
祖父に拳が当たると思われた瞬間…少年の姿は消えていた。
振りかざした扇子が少年に当てられ…正確にはのされていたのだ。
地面に叩きつけられた少年。
土埃があがった。
もう日差しが落ちかけて…紫色の雲が空一面に散らばり、幻想的な夕暮れ。
母に夕飯の用意が出来たから祖父を呼ぶように言われ、やって来た幼子。
その目に映ったのは…あの光景。
少年は土埃の中をゆらりと起き上がり口元の血を拭う。
「…ぐっ」
少年のギラギラとした殺気だった目。
対する祖父もにやりと笑みを浮かべている。
静かな睨み合い。
次の瞬間少年は右手を掴み、急に苦しみだした。
「ぐくっ…」
左手が右手を力一杯押さえ込んでいるように見える。押さえこむ腕はかなりだろう…膝を折り、小刻みに震えている。
何かを止めさせようとするように。
「…そうか、その手が暴走するんだね」