長いコトノハ駄文
□揺蕩う糸の…
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「…ここは」
朦朧とした意識が覚め、自分の視界の中に映し出されたのは…碁盤の目のように作られた古より伝えられた“祈り”の地。
…その街並みを高い所から見下ろす自分がいた。
「…なんて美しい街なんだろう」
自分は鳥になった気分で、美しい夜の街をみている。
肌に感じる風もひんやりと冷たく、心地よいというべきか。
不意に涙が零れ落ちた。
…あんな事があり、精神的にもまいっているからなのか、何か悲しい事があるのか…分からない。
…ただ。
「…泣いているの?四月一日くん」
優しい聞き覚えのある声にゆっくりと振り向いた。
そこには月明かりに浮かび上がる和服姿の百目鬼遙が微笑みを浮かべた姿があった。
「…やっぱり泣いているね…」
「…遙さん」
伏せめがちになる四月一日を包むような優しい表情で遙はゆっくりと目の前の彼のもとにやって来た。
大きく…ひんやりとする手のひらが四月一日の頬に当てられ、瞳に溜められた雫を彼の指が優しく拭い取った。