長いコトノハ駄文
□樹海の糸
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「…四月一日、どうしても行きたいのね」
「…侑子さんや、百目鬼たちが言いたい事は分かります、でも」
四月一日は視線を落とした。
「樹海の糸」
「…もうすぐだね、修学旅行」
いつもの昼休み、九軒ひまわりと蒲公英、百目鬼静、そして四月一日君尋の三人と一羽のランチタイム。
今日は天気も良いので、久々に外での時間。
九軒ひまわりは蒲公英に卵焼きを食べさせる手を止め、手紙を四月一日に渡した。
「…へえ、今年は京都なんだ…」
千年の古都、京都。
奥ゆかしい古の都。
「…神社仏閣が沢山あって、一度行ってみたかったんだ」
四月一日はテレビや写真でしか見たことのない…都を一度この目で見てみたかった。
「…四月一日」
黙々と食べていた百目鬼は、少し曇った表情を見せた。
「え?」
「…行くのか?」
「…、きたい…」
百目鬼の視線に居たたまれずそれを逸らした。
「…言いたい事はわかるよ…、あんなことがあった…後だし」
四月一日は俯いた。
砕けたガラス。
飛び散る破片は朝日に反射して。
落ち行く身体。
…動かない右手の小指。